『屋上で会いましょう(옥상에서 만나요)』
第6回
「屋上で会いましょう」
옥상에서 만나요
2/26(火)19時から明洞のカフェ「FLASK(플라스크)」さんにて、初参加お二人をお迎えして5人で話し合いました。チョン・セランの作品『フィフティ・ピープル』の訳書(亜紀書房)はすでに三刷。ちょっと分厚いけれどもぐいぐいと読ませる良質な群像小説です。
今回の作品はストーリー設定が結構奇抜です。
某有名スポーツ新聞の広告事業部で働くアラサーの主人公。就職難の中でやっと見つけた職場は労働環境が悪く、広告取りはキャバクラでの接待が多く、自身もセクハラに悩まされており、“私”は屋上からいつも飛び降りたいと思いながら日々を過ごしています。会社の先輩たちが次々と結婚していくので、三人にたずねます、どうやったら結婚ができるのかと。
先輩たちは『閨中操女秘書』という書物のことを教えてくれます。いんちきくさいなあと思いつつも主人公は、その書にある呪術に必要なものを苦労して集めて、日曜の晩に会社の屋上で将来の夫が出てくるという呪術を行います。
出てきたのはなんとも不思議な物体。
物体が“…マン”という言葉を発するので、主人公は、会社への自分の怨念が“ミョルマン(滅亡)の使徒(人類を滅亡させることを最終目標としてやってきた者)”を呼び出してしまったのかと少し後悔しつつも、責任を持って物体を家に連れて行くことにし、奇妙な夫婦生活をスタートさせるのですが。
ファンタジーはちょっと苦手という方からすると若干読み進めにくい物語かもしれません。滅亡の使徒という言葉の選び方が面白いという方もいました。呪術に用意するものが面白いという方も。
考えが共通したのは、とても短い一文に韓国の社会問題がこれでもかと盛り込まれていて大変面白かったということ。社会における女性の立ち位置、ソウル周辺都市の殺伐とした感じ、若年層の就職難や非正規労働者の苦労、エトセトラエトセトラ。
ファンタジーの中に韓国のリアルがそっと顔を出し、そして小さな希望を見つめる温かいまなざし。そういうのを描くのが大変上手なチョン・セラン節が読者をひきつけます。ファンタジーが強めなの好みが分かれるところですが、今回の読書会もいろいろな視点での意見を聞くことができて有意義な時間となりました。
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